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2010年11月27日土曜日

Leica M9その後 点検完了

 以前報告した、Leica M9の気になる不具合(?)、点検修理完了。

 メールでライカジャパンに問い合わせていた事象は以下の通り。

 1)電源オフでもシャッターボタンを押すとLEDが明滅する。
 2)シャッターボタン半押しでAEロックが出来ない。
 3)シャッター半押しで露出補正リング回しても補正値が設定出来ないことがある。
 4)SDカード挿入でも「カードがありません」表示が出ることがある。
 5)再生時に画面ズームインして、スクロールすると他の画面に飛ぶことがある。

 メールでの回答では、5)についてはファームウエアーアップデートで解消されているとのこと。他は
基本的には実機を見て点検を勧めるとのことであった。

 以来、忙しくてなかなか修理点検に出せなかったが、ようやく昨日銀座のライカショップへ持参し点検を依頼。早速夕刻には、ライカショップより点検結果が電話で伝えられた。とても早い対応だ。

 1)については、上部基盤に作動不良があったとのことで交換修理。
 2)は、ソフトレリーズ時には半押しでシャッターが切れるのでAEロックは出来ない仕様となっているとのこと。標準/分離チャージで使用すればAEロックは可。
 3)露出補正リングは異常なし。但しシャッター押し方によりやや微妙なズレが発生することがある、とのこと。
 4)SDカードは基本的には指定カードを使用して欲しい。また、カメラで時々初期化をすることを推奨、とのこと。

 銀座のライカショップの対応はスピーディーでテキパキしていて、こちらの質問にも的確に答えてくれ、非常に好感が持てた。プロフェッショナルな印象で、だいぶ信頼感を回復することが出来た。
 無限大ピンと点検と調整もやってもらい、愛機は今朝宅配で早くも手元に届けられた。

 しかし、ショップの技術の方がコメントしていたように、SDカードの認識の有無が起こりうる点、時々カードの初期化しないと不具合が発生する可能性があることなど日本製のカメラではまず有り得ない点だ。こうした所は改良が必要だろう。またこの点に関して、ドイツ本国側からの正確な情報と説明が不足している印象を受けた。

 また、ソフトレリーズ設定ではAEロックが使えないことなど、マニュアルには一切記載がない(日本語版には追記されている)。これもショップ側は謝っていた。補正リングの問題も、微妙な押し加減が設定に影響するのでは使いにくい。まして基盤不良で電源作動不良が起きるのは論外だ。道具としての完成度に今一歩のブラッシュアップを期待する。

 とりあえず一件落着だが、ドイツライカ社は日本人スタッフの迅速なテキパキサービスに助けられ顧客を失わずにすんだ。日本人のプロダクト、サービスの品質に対する要求水準は非常に高く、本国の方はそれに対応するモノ造りに必ずしもなっていない事がある。それを補って、信頼性を担保しているのが日本のローカルスタッフのサービスだ,という事を知った一件であった。

 この逆は私の米国会社でのサービス品質管理プラクティスでいやという程経験したが... こういうギャップを乗り越えて本当のグローバル品質になってゆくのだ、とも。

2010年11月24日水曜日

紅葉散らすな御室戸の山




 今年の紅葉は例年にない美しさ。

夏の猛暑で木が傷み、秋は短く寒さが急にやって来た今年。
こんなときは紅葉はどうなるんだろうという心配をよそに、例年よりやや早く紅葉のシーズンがやって来た。それも鮮やかな赤や黄色の織りなす錦繍の秋。日照時と夜の寒暖の差が大きく,うれしい予想外の鮮やかな赤が浮かび上がって来た。

関西に住む人の特権の一つは、この紅葉のシーズンを堪能出来ること。紅葉の名所がいたるところにある。特に奈良、京都の歴史を彩る紅葉風景は時空の旅人をワクワクドキドキさせる。もっとも短い期間にすべてを回ることが出来ないのが悩みの種。こんな贅沢を言える幸せ...

それでも,今年の秋は高野山に始まり,室生寺、談山神社と巡ることが出来た。談山神社は奈良の紅葉名所としては超有名どころで、訪れた当日は車の大渋滞と人出でまいったが、その割にはイマイチであった。かえって桜井からの行き帰り、渋滞でのろのろ運転のバスの窓から見たの路傍の紅葉が素晴らしかった。

去年は京都東山の南禅寺、永観堂、真如堂、今戒光明寺の素晴らしい紅葉を楽しんだ。今年は少し違う場所を探訪しようと三室戸寺を訪ねることにした。

ここ京都宇治の三室戸寺は、ツツジ、石楠花、紫陽花、蓮、そして紅葉で有名な花の寺。京都は紅葉の名所が多いが、シーズンの人出でも有名だ。何しろ東京からも新幹線で2時間程で来れる。JRの「そうだ京都へ行こう」などと言うTVCMに誘われる東京の住人がいかに多いことか。

幸いなことに三室戸寺はそれほどの混雑もなく,ゆっくりと紅葉を愛でることが出来る。穴場と言うにはちょっと有名過ぎるが,意外な穴場かもしれない。

三室戸寺は西国観音霊場十番札所。約千二百年前の光仁天皇勅願により、千手観世音菩薩を御本尊として創建されたお寺である。京阪で中書島乗り換えで宇治線三室戸下車。徒歩15分。

あまり能書きは要らないだろう。とにかく稀に見る今年の美しい紅葉スライドショーをご堪能下さい。

暮れはつる 秋のかたみにしばし見ん 紅葉散らすな御室戸の山 ーーー西行法師




















2010年11月21日日曜日

金沢 北のみやび












 先週は金沢に仕事で出かけた。出張であちこちへ行くたびに,地方都市のそれぞれの美しさと,文化の香りと、穏やかな人々の暮らしを垣間みることが出来るのは役得かもしれない。特に金沢などうらやましがられる出張先の代表だろう。忙しく駅/空港と出先とホテルの間を行き来するのだが,時間を見つけて垣間みるその町の佇まいにふれることは楽しい。

 考えてみれば明治維新以前は,地方都市は,単なる「地方」ではなくて,それぞれの国の大名の「お膝元」でありいわば「みやこ」であった。廃藩置県が行われ、中央集権で東京一極集中となってゆくのは明治以降の出来事だ。戦後の高度経済成長、さらにはグローバル化の中でそれが加速される。

 人々は豊かさを求めて,こぞって東京へ出てゆこうとした。いや田舎にいても次男坊以下は田畑もなく,働く仕事場もない。憧れの東京。「花の都、うれし楽し,夢のパラダイスよ東京」。イナカには何にもない、と自虐的な歌がはやり、東京へ出てゆく恋人の後姿に涙する。東京は生き馬の目を抜く激しい競争社会。脱落する若者もでる。故郷の山河を思い望郷の思いにとらわれる。しかし,帰る所はない。「故郷は遠きにありて想うもの...帰る所にあるまじや」だ。都会で孤独と戦いながら生きてゆく。時々は「ふるさとの訛なつかし停車場」を徘徊する。いつかは故郷に錦を飾ることを夢見て...

 そんな「東京」、「地方」という二分法、二元論が明治以降この国を支配して来た。
 気がつくとバブル崩壊。さしもの高度経済成長は過去のものとなり、20年もの経済停滞期を経験し、未だに立ち直れない。いち早く西欧流の近代化を果たしたアジアの優等生、アジア唯一の経済大国を自任して来た日本は,いまや中国や韓国、さらにはインドやASEAN諸国の目覚ましい経済成長を横目で見ている情けない状況に陥ってしまった。いや、そういう成長期を過ぎて、成熟した大人の時代を迎えたといっても良い。

 そんな時,心折れて、ふと我々が飛び出し、捨てて来た故郷、地方、田舎に目をやると,そこには破壊されずに残された文化や,心穏やかな風景、町並み、生活風習が残されているではないか。経済成長に取り残された地域であればある程,すなわち田舎であればある程、それが残されていることに気付く。

 なあんだ,こんな所に美と安らぎが隠れていたのか。そういえば忘れてたなあ。よくぞなくならずに今まで...まさに「美の壷」

 その美しい町の代表の一つが金沢だ。現代的な評価軸でいえば人口45万の政令指定都市にもなれない北陸の一地方都市に過ぎないが、かつては加賀前田家百万石の城下町で、京都や江戸にも負けない文化の華開いた町だ。兼六園に代表されるその繁栄の面影と雅な趣が今も町の随所に感じられる文化都市だ。こうした空気は雲州松江でも感じることが出来る。

 江戸期にはこうした独特の文化を育んだ「地方都市」が日本全国いたるところにあった。徳川幕藩体制は、基本的には地方分権の時代であった。重要伝統的建造物群保存地域に指定されている町はたいてい,こうしたかつて地方文化が花開き、物流や金融の中心として栄えた「地方都市」であった。皮肉にもその後の明治維新や戦後の経済成長などの激震に取り残された町である。不幸なことなだったのか,幸運なことなのか,その評価はこれからかもしれない。

 こうした町に共通の構成要件はつぎのとおり。城郭、大名庭園、藩校、武家屋敷、商家、町家、花街、寺社仏閣という「ハコもの」の道具立てが揃っている。それに「中身」たる偉人、文化人、芸能、食、職人技、工芸、そして祭り。こういった道具立てがなにがしか揃っている町がいまでも風格を保っている。金沢はその代表格だろう。

 ただ実態はなかなか「地方の活性化」につながっていないのが現実だろう。この経済低迷のアオリを受けているのはまさに「地方」都市である。しかし、従来型の経済成長モデルで考えるから旨く行かない。やっぱり東京型都市像を追いかけているからだろう。あるいは工場誘致、などという20世紀型産業構造を軸に「活性化」モデルを組立てるからだ。

 ここでも「活性化」モデルイノベーションを行わなければならない。そもそも「活性化」って、何を活性化することなのだろう?むしろ町毎の価値の多元性を再認識することが必要だろう。もちろん経済的な価値に繋げていくことが豊かさと成長のベースには必要だ。しかし、ある程度の経済的付加価値が保証されることがボトムラインであろうが、地方にはこれまでの経済成長を軸とした価値観にとらわれない新しい価値創造、資産の再評価、活用が求められよう。

 あれ?こんな評論家コメントを書くつもりではなかった。最後は、意に反して「NHK時論公論」風になってしまったが...

 とにかく金沢は素敵な街だ。秋晴れの好天にも恵まれた。兼六園、金沢城はもとより、橋場町、卯立山公園、近江町市場、犀川、浅野川、主計町... 高校生の時に旅し、出会った加賀乙女との甘酸っぱい思い出とともに。