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2011年10月20日木曜日

私の知ってるニューヨーク散策 ーミッドタウン徘徊ー

 4年ぶりにニューヨークへ行った。ニューヨークにいたときはあれ程頻繁に東京と行き来していたのに、一旦日本へ帰ると、なんとニューヨークは遠い街である事か... 

私の活動拠点であったミッドタウンはビジネス、エンターテイメント、観光の中心だ。お金と時間さえあれば最高に楽しい所だ。逆にお金も時間もなければ冷たい街だ。ビジネスで成功して摩天楼のトップフロアーにオフィスを構えるのも,没落してホムレスになるのも紙一重。アメリカの繁栄の象徴かもしれない。その繁栄の輝きがまばゆい分、その影もはっきり見える街だ。世界経済の中心である金融街はダウンタウンのウオールストリートだと言われるが、最近は意外にミッドタウンに集まってきている。9.11以降特にその傾向が強い。日系の金融機関もミッドタウン集中だ。

タイムズスクエアーは、ミュージカルと観光のメッカだが,ここにはモルガンスタンレー本社もナスダックもある。チョット場違いな感もしないでもないが、渦巻くネオン、いやデジタルサイネージのナカに株の値動きを流すティッカーや経済ニュースを流す電光掲示板(古い言い方だ!)が埋もれている事にご注意あれ。ウオールストリートで格差社会へのプロテストを呼びかけたデモ隊が集まっていたが、先週はこの一団がタイムススクエアーへ押し掛けた。これは単に人が大勢いる所でアピールしたいというだけでなく、金融業界の雄であるモルスタがいるからでもあろう。

碁盤の目のような分かりやすい街路区画と林立する高層ビルが街の景観を形作っている。イエローキャブも最近はニッサンのハイブリッドに置き換わりつつあるようで,意外に奇麗な新車が走っている。これも街の景観を形付ける重要なエレメントだ。道路は相変わらずぼこぼこに穴があいている。所々赤白ダンダラ模様のチューブが路上に突っ立っていて,そこからスチームの白い蒸気が上がっている。ニューヨークの欠かせない光景の一つだ。 

メトロポリタン美術館、近代美術館(MoMA)、グッゲンハイム美術館、フリックコレクションなどの世界の美を集めた施設も世界の富が集まるニューヨークを象徴する名所だ。目や、知性や、感性を楽しませるものだけでなく、人間の欲望の根源である食欲を満たす場所にも事欠かない。世界中のグルメを唸らせるレストラン。ビッグジューシーステーキ、オイスターバー、メインロブスター、ワイン、そして今やスシバーはニューヨークを代表する食のラビリンスになっている。路上ベンダーのプレッッツェルもホットドッグもワッフルもすべてアメリカサイズでカロリーオーバーは覚悟しなくてはいけないが...

ともあれ、私にとってニューヨークと言えば,ミッドタウンのイメージだった。会社のオフィスも、ビジネスパートナーや取引先も、仕事もビジネスも,ショッピングも,エンタメも、観光も。そして住むのも... 何しろグランドセントラル駅から半径数キロ以内で生活していた。日本からの客がくれば観光も食事もこの辺で用が足りる。しかもほとんど歩いてまわれる範囲にあるのがうれしい。だからそれだけでこれがニューヨークだと思っていた。いや、これがアメリカだとさえ思っていた。

セントラルパークはこのビルの林立するマンハッタン島の極めて人工的に切り取られた緑の公園だ。その自然とはかけ離れた長方形に区切られた「自然」がニューヨークらしい。ロンドンのハイドパーク、ケンジントンガーデン、リージェントパークとは成り立ちから違う。セントラルパークへ来ると、いたるところに大きな岩が露出しているのを目にする。このハドソン河とイーストリバーに挟まれた狭い島マンハッタンが、中洲などではなく、大きな一枚岩の岩礁である事を実感するだろう。

別にここで観光ガイドを書こうという訳ではないが、やはりミッドタウンを描写しようとするとガイドブック的になる。それだけ皆に知られた世界的な街なのだ。欲望渦巻く街ミッドタウン、最高も最低も共存する街ミッドタウン、苦闘した街ミッドタウン、裏切りと背信の街ミッドタウン、ヤッターと叫んだ街ミッドタウン、楽しかったミッドタウン、思い出イッパイのミッドタウン。そういう感傷がガイドブックのナカにちりばめられた街ミッドタウン... 私にとってセンチメンタルミッドタウンになったのだ。昨今すっかり日本の影がこの街に薄くなってしまった分だけ余計に...