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2011年11月19日土曜日

奈良公園の秋 ー 人混みを避けると不思議な発見が...ー

ここのところ、仕事で出張が続き、なかなか秋の大和路散策が出来なかった。たまの週末のたんびに雨という不幸も重なっている。そして、西宮に引っ越したら,これがまた奈良が遠くなってしまった。以前は近鉄大阪上本町まで徒歩15分。近鉄阿倍野橋まででもJRで5分だったのに... 梅田経由で鶴橋まで一時間。この分だけ遠くなってしまった。この点が西宮に引っ越したデメリット。贅沢言っちゃいかんですが。

 先週の日曜日に久しぶりに奈良公園を散策。この日は晴れた。11月恒例の正倉院展を見たかったのだが、会期最終日前日の日曜日。混んでいない訳がない。案の定、奈良の街自体いつも見た事がないほど人で溢れている。そうだよね、秋の行楽シーズン、今日は特に貴重な晴れ間の日曜日。奈良国立博物館に近づくにつれ、ゾロゾロと動いていた人の塊が、列をなすようになって博物館の入口辺りで動かなくなって群れている。

 元来、私は人出で混雑する博物館や美術館というものには行く気がしない人間なのだ。東京上野に来る「なんとか展」、入場2時間待ちなどという展覧会には行った事がない。そういう贅沢な気性なので、今回も博物館の入口に出来た長蛇の列をみて萎えてしまった。トグロ巻いて並んでる... とりあえず中の状況を入口の係員に聞くと、「中が混雑してるんで入場規制してるんです」と、全うな返事。当たり前のように言われると、ますます並ぶ気がしなくなってしまった。こうして、毎年萎えていて、いまだに正倉院展を見た事がない。平日にでも行けば少しはましなんだろうが... そのうち完全リタイアーしたらそうしよう。

 そもそも、こうした美術品や、古文書、歴史的な遺物は落ち着いた静かな雰囲気の中でユックリと鑑賞したい。そしてその背景やたどってきたシルクロードに思いを馳せながら空想に耽る。これが博物館巡りの醍醐味のはずなのだから。アート鑑賞マニュアルその一、は「美の壷」を独り占めすべし。押すな押すな、で立ち止まらないで下さい、の会場警備の声に追い立てられるように見る。単に見た、というだけで終わる「見物」なら,行かない方がましだ。もっとも、そういうお高くとまった態度だと,きっと一生見れないかもしれないだろう。

 という事で、今回も正倉院展をパスして、新装なった東大寺ミュージアムを訪ねた。こちらは比較的ユックリと鑑賞出来た。聖武天皇の陰劔、陽劔の展示もあるではないか。三月堂改修に伴い日光、月光両菩薩もここにおわします。シルクロードをたどってきた戎の舞楽面も... その東大寺の大仏殿の裏手に当たる大仏池の黄葉、正倉院、戒壇院を回って帰途に付いた。

 写真家の入江泰吉氏も言っているように、奈良に行ったら、観光客の集まる「表」ばかり行かず、「裏手」行って下さい。そこここに奈良の魅力が隠れているんだから...そびえ立つ巨大な大仏殿を後ろから見た事ありますか?大仏池に写る紅葉、黄葉、そして若草山を眺めた事ありますか?正倉院を壁越しに見た事ありますか?戒壇院に筑紫太宰府の戒壇院の面影を見た事がありますか? そして、謎の近代建築が東大寺境内にあるのを知ってますか?

 人混み嫌いで、人と同じ事やるのが嫌で、そうして群れから離れてみると、「有名観光地」にもいろいろ不思議な発見がありますよ。群れて歩いていると人の背中しか見えないですよ。


(撮影機材は Fujifilm X10)