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2016年9月6日火曜日

東山石塀小路散策 〜もう一つの伝統的建造物群保存地区〜

石塀小路
高台寺通り側の入り口


 八坂神社(祇園社)、円山公園から南、高台寺界隈は、いわゆる「ねねの道」として観光客に人気の地区になっている。高台寺通りと下河原町通りの間には狭い路地がいくつか通っている。どれも狭くて鍵の手になっているので行き止まりのように見えるが、実は通り抜けができる。そうした閑静な一角、ここが「石塀小路」である。

 この辺りは、豊臣秀吉の北政所、ねね縁の地である。太閤の没後、剃髪して高台院と名乗ってから暮らしたと言われる現在の園徳院、高台寺を中心とした一帯は「祇園廻り」と呼ばれていた。江戸時代には、この辺りに芸妓街、お茶屋街ができた。明治初期までは遊郭もあったが廃絶になり、その後はお茶屋の貸家街になった。石塀小路と呼ばれるようになったのは意外に新しく、明治後期から大正初期に入ってからだと言われている。当時は妾宅が多かったらしく「お妾さん街」などとも呼ばれたそうだ。閑静で落ち着いた街並みで、街の格を上げるために高い石塀を築き、石畳を敷き詰めた。最近の石畳は京都市電廃止の時に出た路面の切り石を敷き詰めたものだ。今はこじんまりした趣のある旅館や料亭、貸席などが連なっている。

 最近は観光客にこの隠れ家的スポットの存在が気付かれて、ワイワイと押し寄せてくるようになったらしい。小路のいたるところに「静」という札が掲げられている。その札も板に墨で流れるように書かれていて町の雰囲気を壊さない配慮がある。しかし、貸衣装の浴衣姿に慣れない下駄履きでやってくる女性の集団は、自撮り棒片手に、中国語で声高にキャーピーキャーピーワメキあっている。それを欧米系の観光客が「 Look at  them! Chinese Geisha Girls!」と笑いながら写真を撮る。確かにあまりここの静謐な雰囲気を壊してほしくないものだ。地元の人にとっては迷惑なことだろうが、Visit Japan!, OMOTENSHI!と言ってる以上我慢するしかないのだろう。まったく観光客というものは...... 通りすがりの時空旅写真家である私も、この路地の閑静な雰囲気のカットをモノするのに苦労した。なかなか人がいなくなる瞬間が来ない。待ち続ける忍耐力が求められる。

 産寧坂地区一帯は重要伝統的建造物群指定地区に指定されているが、1996年にこの石塀小路地区が追加された。

高台寺通り
最近は「ねねの道」というらしい

石塀小路


京都市電廃止のときに出た敷石を利用した石畳道
京都の路地には珍しく石塀を高く築いている

お宿「玉半」

観光客が少ないように見えるが、人通りがなくなるのを待って撮影

円徳院

円徳院庭園

円徳院から石塀小路へ抜ける小径

ここは赤レンガ塀にガス灯


石塀小路
下河原町通り側出口の一つ

多少の高低差があるところが奥ゆかしい


(撮影機材:Leica SL+Vario-Elmarit-SL 24-90mm f.2.8-4 ASPH)